多汗症の種類と原因:全身性と局所性の違い
この記事は一般的な情報提供を目的としており、医療アドバイスに代わるものではありません。健康上の問題については、必ず医師にご相談ください。編集ポリシー

多汗症の全身性・局所性の違い、原発性・続発性の分類、エクリン汗腺のメカニズム、診断基準を詳しく解説。部位別の特徴や治療法の概要も紹介します。

多汗症は、体温調節に必要な量を超えて過剰に汗が分泌される疾患です。日本では約7人に1人が何らかの多汗症の症状を持つとされており、日常生活に大きな支障をきたすケースも少なくありません。本記事では、多汗症の種類(全身性・局所性)、原因、診断基準について詳しく解説します。
多汗症の基本:エクリン汗腺と発汗のメカニズム
多汗症に関わる汗腺はエクリン汗腺です。マルホ医療関係者向けサイトによると、エクリン汗腺は直径約0.4mmの小さな組織で、全身に約230万個分布しています。ここから分泌される汗は99%が水分で、基本的には無色無臭です。
ワキガの原因となるアポクリン汗腺とは異なり、エクリン汗腺は体温調節を主な役割としています。多汗症は、このエクリン汗腺からの発汗が何らかの原因で過剰になった状態を指します。
発汗の神経伝達メカニズムは、視床下部からの命令が交感神経を介して伝達され、神経終末部からアセチルコリンが分泌されます。このアセチルコリンがエクリン汗腺のムスカリン受容体(M3受容体)に結合することで発汗が起こります。多汗症では、この交感神経系の活動が過剰に亢進していると考えられています。
| 汗腺の種類 | 分布 | 汗の特徴 | 関連する疾患 |
|---|---|---|---|
| エクリン汗腺 | 全身(約230万個) | 99%が水分、無色無臭 | 多汗症 |
| アポクリン汗腺 | 脇、耳、乳輪など限定部位 | タンパク質・脂質を含む | ワキガ |
全身性多汗症と局所性多汗症の違い
多汗症は大きく「全身性多汗症」と「局所性多汗症」に分類されます。日比谷ヒフ科クリニックの解説によると、多汗症の約90%は局所性多汗症です。
全身性多汗症は、体全体にわたって過剰な発汗が見られる状態です。甲状腺機能亢進症、糖尿病、感染症、悪性腫瘍などの基礎疾患が原因となる「続発性全身性多汗症」と、明確な原因が見つからない「原発性全身性多汗症」があります。特に更年期の女性に多く見られるホットフラッシュも全身性多汗症の一種として知られています。
局所性多汗症は、体の特定の部位に限定して過剰な発汗が起こる状態です。特に手のひら(手掌多汗症)、足の裏(足底多汗症)、脇の下(腋窩多汗症)、顔面(顔面多汗症)に症状が出やすいとされています。
| 分類 | 全身性多汗症 | 局所性多汗症 |
|---|---|---|
| 発汗部位 | 体全体 | 特定部位(手・足・脇・顔など) |
| 頻度 | 約10% | 約90% |
| 主な原因 | 基礎疾患、薬剤 | 交感神経の過活動 |
| 発症年齢 | 年齢を問わない | 25歳以下が多い |
| 睡眠中の発汗 | あり得る | 通常は止まる |
原発性多汗症と続発性多汗症の分類
多汗症はさらに「原発性」と「続発性」に分類されます。板橋区成増駅前かわい皮膚科の解説によると、原発性多汗症は明確な原因疾患がなく、交感神経の過活動によって起こるとされています。
原発性多汗症の特徴
- 比較的若い世代に多く発症する
- 家族歴がある場合が多い
- ストレスや緊張で症状が悪化する
- 睡眠中は発汗が止まる
- 左右対称に症状が現れる
続発性多汗症の原因となる疾患・状態
- 甲状腺機能亢進症(バセドウ病)
- 糖尿病による自律神経障害
- 更年期障害によるホルモン変化
- 感染症(結核など)
- 神経疾患(パーキンソン病など)
- 薬剤の副作用(抗うつ薬、解熱鎮痛薬など)
兵庫医科大学病院によると、原発性腋窩多汗症の診断基準は、原因不明の過剰な局所性発汗が6か月以上持続していることに加え、以下の6項目中2項目以上を満たす場合とされています。
- 最初の症状発現が25歳以下
- 左右対称の発汗
- 睡眠中は発汗が止まる
- 週1回以上の多汗エピソード
- 家族歴がある
- 日常生活に支障をきたしている
局所性多汗症の部位別特徴と影響
局所性多汗症は発症部位によって症状や生活への影響が大きく異なります。四谷メディカルキューブでは、特に手掌多汗症について詳しく解説されています。
| 発症部位 | 主な症状 | 生活への影響 | 有病率 |
|---|---|---|---|
| 手のひら | 手が常に湿っている、紙が濡れる | 書類作成、握手、電子機器操作に支障 | 約5.3% |
| 足の裏 | 靴の中が蒸れる、足が滑る | 靴擦れ、水虫リスク増加 | 約2.8% |
| 脇の下 | 衣類の汗染み、臭いの原因 | 服の選択肢が限られる | 約5.7% |
| 顔面 | 顔から大量の汗が流れる | 化粧崩れ、対人関係への影響 | 約1.0% |
| 頭部 | 頭から汗が滴る | 外見上の悩み | 約1.0% |
多汗症の治療法の概要
多汗症の治療は、発症部位や症状の重症度に応じて選択されます。とどくすり通信によると、主な治療法は以下の通りです。
- 外用薬:塩化アルミニウムローションの塗布が第一選択。1日1回から数回の塗布で発汗を抑制
- ボトックス注射:重症の腋窩多汗症に対して保険適用あり。効果は4〜6か月持続
- イオントフォレーシス:手のひらや足の裏を水に浸して微弱電流を流す治療法
- 内服薬:抗コリン薬(プロバンサインなど)が使用される
- 手術:交感神経遮断術(ETS手術)により根治を目指す
- エクロックゲル:2020年に日本で承認された原発性腋窩多汗症の外用薬
手のひらや足の裏の多汗症治療については「手汗・足汗の治療:イオントフォレーシスの効果」で詳しく解説しています。また、ワキガとの関連性については「ワキガとは?原因・メカニズム・遺伝の関係」もあわせてご参照ください。

まとめ
多汗症はエクリン汗腺からの過剰な発汗によって起こる疾患で、全身性と局所性、原発性と続発性に分類されます。約90%が局所性であり、交感神経の過活動が主な原因と考えられています。適切な診断を受けることで、症状に合った治療法を選択できますので、日常生活に支障を感じている方は早めに皮膚科や形成外科を受診することをおすすめします。
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