睡眠時無呼吸症候群の検査方法:簡易検査とPSG検査の違い
この記事は一般的な情報提供を目的としており、医療アドバイスに代わるものではありません。健康上の問題については、必ず医師にご相談ください。編集ポリシー

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の2つの検査方法「簡易検査」と「PSG検査(ポリソムノグラフィー)」の違いを徹底解説。検査の流れ、費用、診断精度、AHIの見方、検査の選び方まで、SAS検査に必要な情報を網羅的にまとめました。
睡眠時無呼吸症候群の検査方法:簡易検査とPSG検査の違い
「いびきがひどい」「朝起きても疲れが取れない」「日中にどうしても眠くなる」——こうした症状に心当たりがある方は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の可能性があります。SASは放置すると高血圧や心疾患、脳卒中のリスクを高めることが知られており、早期発見と適切な治療が重要です。
SASの診断には大きく分けて簡易検査(スクリーニング検査)とPSG検査(ポリソムノグラフィー検査)の2種類があります。本記事では、それぞれの検査の特徴・流れ・費用・精度を詳しく解説し、あなたに合った検査の選び方をご案内します。
関連記事として、睡眠時無呼吸症候群の完全ガイドもあわせてご覧ください。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?検査が必要な理由
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)とは、睡眠中に繰り返し呼吸が止まったり(無呼吸)、浅くなったり(低呼吸)する疾患です。1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数をAHI(無呼吸低呼吸指数)と呼び、この数値が5以上かつ日中の眠気などの症状がある場合にSASと診断されます。
日本における潜在的なSAS患者数は約300〜500万人と推定されていますが、実際に治療を受けているのはそのうちの一部にすぎません。未治療のSASは以下のようなリスクを伴います。
- 循環器疾患:高血圧(約2倍)、心不全(約2.4倍)、脳卒中(約3倍)のリスク上昇
- 交通事故:居眠り運転による事故率が健常者の約2〜7倍
- 生活の質の低下:集中力や記憶力の低下、うつ症状
こうしたリスクを防ぐためにも、早期の検査と診断が欠かせません。いびきの完全ガイドでもSASとの関連について詳しく解説しています。
簡易検査(スクリーニング検査)の特徴と流れ
簡易検査とは
簡易検査は、SASが疑われる患者さんに対して最初に行われるスクリーニング検査です。携帯型の小さな検査装置を使い、自宅で手軽に実施できるのが最大の特徴です。

検査で測定する項目
簡易検査では、主に以下の項目を測定します。
- 鼻の気流(鼻カニュラセンサー)
- 血中酸素飽和度(SpO2)(パルスオキシメーター)
- いびきの音(マイクセンサー)
- 胸部・腹部の動き(呼吸努力センサー)
- 心拍数
検査の流れ
- 医療機関を受診:問診・診察でSASの疑いがあれば検査を申し込み
- 検査機器の受け取り:クリニックで装置の使い方を説明される
- 自宅で装着・就寝:就寝前にセンサーを鼻・指・胸に装着して通常通り眠る
- 翌日返却:検査装置を医療機関に返却
- 結果説明:約1週間後に結果を聞きに受診
メリットとデメリット
メリット:
- 自宅でリラックスした状態で検査できる
- 入院不要で身体的・時間的負担が少ない
- 費用が比較的安い(3割負担で約2,700〜3,000円程度)
- オンライン診療に対応している医療機関もある
デメリット:
- 脳波を測定しないため、正確な睡眠時間がわからない
- AHIの算出が概算になる(RDIで代用)
- 軽症の場合は見逃す可能性がある
- 中枢性無呼吸の鑑別が困難
PSG検査(ポリソムノグラフィー)の特徴と流れ
PSG検査とは
PSG検査は、SASの確定診断を行うためのゴールドスタンダードとなる精密検査です。睡眠中の脳波・眼球運動・筋電図・心電図・呼吸状態・酸素飽和度など、多くの生体信号を同時に記録します。精密検査について詳しくはこちらをご参照ください。

検査で測定する項目
PSG検査では、簡易検査の項目に加えて以下も測定します。
- 脳波(EEG):睡眠の深さ・ステージを判定
- 眼球運動(EOG):レム睡眠の判定
- 顎の筋電図(EMG):筋緊張の低下を確認
- 心電図(ECG):不整脈の有無
- 下肢の筋電図:周期性四肢運動障害(PLMD)の評価
- 体位センサー:仰向け・横向きなど睡眠中の体位
検査の流れ
- 入院手続き:夕方〜夜に来院し、病室に入室
- センサー装着:技師が約20〜30分かけて各センサーを装着
- 就寝・モニタリング:通常の就寝時間に消灯、一晩中データを記録
- 翌朝退院:起床後にセンサーを外し、退院(通常翌朝6〜7時頃)
- 結果説明:約1〜2週間後に受診し、結果を確認
メリットとデメリット
メリット:
- 脳波で正確な総睡眠時間を測定でき、精密なAHIが算出可能
- 睡眠の質(深さ・レム/ノンレム比率)も評価できる
- 中枢性無呼吸と閉塞性無呼吸の鑑別が可能
- 他の睡眠障害(PLMDなど)の同時診断ができる
デメリット:
- 1泊2日の入院が必要(仕事や家庭の調整が必要)
- 費用が高い(3割負担で約1万〜1.5万円程度)
- 普段と異なる環境で眠るため、通常の睡眠が再現できない場合がある
- 検査入院の詳細はこちらで確認できます
簡易検査とPSG検査の比較表
以下の表で2つの検査の違いを一覧で確認できます。

| 比較項目 | 簡易検査(スクリーニング) | PSG検査(ポリソムノグラフィー) |
|---|---|---|
| 検査場所 | 自宅 | 病院(入院) |
| 検査時間 | 一晩(自己管理) | 一晩(技師が管理) |
| 入院の有無 | 不要 | 1泊2日の入院が必要 |
| 測定項目 | 呼吸・SpO2・いびき・心拍 | 脳波・眼球運動・筋電図・心電図・呼吸・SpO2・いびき等 |
| 脳波測定 | なし | あり |
| AHI算出 | 概算(RDI) | 正確なAHI |
| 診断精度(感度) | 94.9% | 100%(基準検査) |
| 診断精度(特異度) | 62.5% | 100%(基準検査) |
| 費用(3割負担) | 約2,700〜3,000円 | 約10,000〜15,000円 |
| 結果までの期間 | 約1週間 | 約1〜2週間 |
| 適応 | 初回スクリーニング | 確定診断・重症度判定 |
研究データによると、簡易検査(HST)の全体的な診断精度は91.0%ですが、中等症〜重症のOSAに対しては77.6%に低下することが学術研究で報告されています。また、HSTのAHIとPSGのAHIの相関は相関係数0.779と高い値を示しますが、診断の一致率とは21%の差があることも指摘されています。
検査結果の見方とAHI(無呼吸低呼吸指数)の意味
検査後に最も重要となるのがAHIの値です。AHIは1時間あたりの無呼吸(10秒以上の呼吸停止)と低呼吸(呼吸が50%以上低下し、SpO2が3〜4%低下)の合計回数を示します。
| AHI値 | 重症度 | 治療方針の目安 |
|---|---|---|
| 5未満 | 正常 | 経過観察 |
| 5〜15 | 軽症 | 生活改善・マウスピース(OA) |
| 15〜30 | 中等症 | CPAP療法の検討 |
| 30以上 | 重症 | CPAP療法の積極的導入 |
簡易検査ではAHIが40以上と明確に重症と判定される場合、PSG検査を経ずにCPAP療法を開始できるケースもあります。一方、簡易検査でAHIが境界域(5〜15程度)の場合は、PSG検査による精密評価が推奨されます。
SASと診断された後の治療法については、睡眠時無呼吸症候群の完全ガイドで詳しく解説しています。
どちらの検査を受けるべき?選び方のポイント
まず簡易検査を受けるべき方
- いびきや日中の眠気があり、SASが疑われる方
- 仕事が忙しく入院の時間が取れない方
- 初めてSASの可能性を指摘された方
- 健康診断で指摘を受けた方
PSG検査が推奨される方
- 簡易検査で異常値が出た方(AHI 5以上)
- 簡易検査では正常だが症状が強い方
- 中枢性無呼吸が疑われる方
- 他の睡眠障害(ナルコレプシー、PLMDなど)の合併が疑われる方
- CPAP療法の導入を検討している方
アメリカ睡眠医学会(AASM)のガイドラインでは、中等症〜重症のOSAが強く疑われる成人にはType 2・Type 3の簡易検査を推奨していますが、簡易検査で陰性でも臨床的にSASが疑われる場合はPSG検査の実施を推奨しています。
検査前に準備すべきこと・注意点
検査をスムーズに受けるために、以下の点を事前に確認しておきましょう。
問診で聞かれること
- いびきの有無と頻度
- 日中の眠気の程度(エプワース眠気尺度)
- 起床時の頭痛や口渇
- 夜間の頻尿
- 既往歴(高血圧、糖尿病、心疾患など)
- 服用中の薬
検査当日の注意事項
- アルコール・カフェイン:検査前日は控える
- 睡眠薬:医師の指示がない限り通常通り服用
- 入浴:PSG検査の場合は来院前に入浴を済ませる(センサー装着後は入浴不可)
- 爪のマニキュア:SpO2センサーの装着に影響するため除去する
- パートナーの同伴:できれば同伴し、いびきや無呼吸の状況を伝えてもらう
不眠症の症状がある方は、睡眠の質に関する情報もあわせて医師に伝えましょう。
検査から治療開始までの流れ
SASの検査から治療までは、一般的に以下のステップで進みます。
- 初診・問診:症状や生活習慣についてヒアリング
- 簡易検査の実施:自宅で1〜2晩装着
- 結果説明:約1週間後に結果を確認
- PSG検査(必要な場合):入院して精密検査
- 治療方針の決定:AHI値と症状に基づいて治療法を選択
- 治療開始:CPAP、マウスピース、手術、生活改善など
- 定期フォローアップ:治療効果の確認と機器の調整
CPAP療法は保険適用で月額約5,000円(3割負担)の費用がかかり、月1回の通院が必要です。治療費用の詳細はこちらで確認できます。
まとめ:早めの検査で健康リスクを予防しよう
睡眠時無呼吸症候群は、適切な検査と治療によって症状を大幅に改善できる疾患です。
- 簡易検査は自宅で手軽にでき、費用も約3,000円と負担が少ないため、気になる症状がある方はまず受けてみることをおすすめします
- PSG検査は確定診断のゴールドスタンダードであり、簡易検査で異常が見つかった場合や症状が強い場合に受けるべき検査です
- 検査結果のAHI値に基づいて、適切な治療法が選択されます
「たかがいびき」と思わず、気になる症状がある方は早めに医療機関を受診しましょう。SASは早期発見・早期治療によって生活の質を大きく改善できます。
いびきの原因と対策や、睡眠時無呼吸症候群の治療法についても、あわせてご覧ください。
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