PRP療法(多血小板血漿療法)による膝痛治療の最新情報
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PRP療法(多血小板血漿療法)の仕組み、膝痛への効果、費用、治療の流れを最新エビデンスをもとに解説。APS・PRP-FDとの違い、適応条件、ヒアルロン酸注射との比較も詳しく紹介します。

PRP療法(Platelet-Rich Plasma:多血小板血漿療法)は、自分自身の血液から抽出した血小板の濃縮液を膝関節に注射する再生医療の一つです。従来のヒアルロン酸注射やステロイド注射とは異なるメカニズムで痛みを軽減し、組織の修復を促進することが期待されています。本記事では、PRP療法の仕組み、効果のエビデンス、費用、治療の流れについて最新情報をもとに詳しく解説します。
PRP療法とは|治療の仕組みと特徴
PRP療法は、患者さん自身の血液を採取し、遠心分離機で血小板を濃縮した「多血小板血漿(PRP)」を患部に注射する治療法です。順天堂大学医学部附属順天堂医院によると、血小板には組織の修復を促進する多くの成長因子(PDGF、TGF-β、VEGFなど)が含まれており、これらが損傷した組織の自然治癒力を高める働きをします。
PRP療法の特徴は以下のとおりです。
- 自己血液由来: 自分の血液を使用するためアレルギーや拒絶反応のリスクが極めて低い
- 再生を促進: 損傷した軟骨や靭帯の修復を促す可能性がある
- 抗炎症効果: 関節内の炎症を抑制し、痛みを軽減する
- 外来治療: 入院不要で、注射後すぐに帰宅できる
近年では従来のPRPをさらに進化させた「次世代型PRP療法」も登場しています。ひざ関節症クリニックが提供するPRP-FD(PFC-FD)療法は、血小板に含まれる成長因子を高濃度に抽出・フリーズドライ化したもので、通常のPRPの2倍以上の成長因子が含まれるとされています。
PRP療法の効果|エビデンスと実績
PRP療法の効果について、日本医科大学付属病院では変形性膝関節症に対する臨床研究が行われています。その結果と他の研究を総合すると、以下のような効果が報告されています。
| 評価項目 | PRP療法の効果 | ヒアルロン酸との比較 |
|---|---|---|
| 痛みの軽減 | 約60〜70%の患者で改善 | PRP群で有意に高い改善率 |
| 効果の持続期間 | 6か月〜1年程度 | ヒアルロン酸の約2〜3倍 |
| 機能改善 | 歩行能力・階段昇降の改善 | 同等〜やや優位 |
| 効果発現までの時間 | 2〜8週間 | ヒアルロン酸はより早い |
| 軟骨再生効果 | 一部の研究で示唆 | なし |
順天堂大学の約500例の実績では、約60%の患者に効果があったと報告されています。特にKLグレード1〜3(初期〜中等度)の変形性膝関節症で効果が高く、グレード4(重度)では効果が限定的です。
ただし、PRP療法はまだ研究段階の要素もあり、すべての患者に効果が保証されるわけではありません。治療前に医師と十分に相談し、期待できる効果とリスクを理解することが重要です。
PRP療法の種類|APS・PRP-FD・LP-PRPの違い
PRP療法にはいくつかの種類があり、それぞれ特徴が異なります。イノルト整形外科の解説を参考にまとめます。
通常PRP(LR-PRP / LP-PRP):
最も基本的なPRP製剤。白血球を含むタイプ(LR-PRP)と含まないタイプ(LP-PRP)があり、LP-PRPは炎症反応が少ないとされています。費用は比較的低めです。
APS(自己タンパク質溶液)療法:
PRPからさらに抗炎症性サイトカインと成長因子を濃縮した「次世代型PRP」です。炎症を抑える作用が強く、変形性膝関節症に特化した製剤とされています。
PRP-FD(PFC-FD)療法:
PRPから成長因子を抽出し、フリーズドライ化した製剤です。保存が可能で、通常のPRPより高濃度の成長因子が含まれます。1回の採血で複数回分の製剤を作成できるのも利点です。
費用と保険適用について
PRP療法は現時点で保険適用外(自由診療)のため、全額自己負担となります。横浜ひざ関節症クリニックなどの情報をもとに費用の目安を示します。
| 治療法 | 1回あたりの費用 | 回数目安 | 合計費用目安 |
|---|---|---|---|
| 通常PRP | 3〜5万円 | 1〜3回 | 3〜15万円 |
| APS療法 | 20〜35万円 | 1回 | 20〜35万円 |
| PRP-FD(PFC-FD) | 15〜30万円 | 1回 | 15〜30万円 |
順天堂大学医学部附属順天堂医院では、1回のPRP注射が26,400円(両膝の場合は52,800円)+第二種再生医療実施料13,200円と報告されています。施設によって費用に大きな差があるため、複数のクリニックで相談することをお勧めします。
医療費控除の対象となる場合があるため、確定申告時に領収書を提出しましょう。また、一部の民間医療保険で先進医療特約として適用される場合もあります。
治療の流れと注意事項
PRP療法の一般的な治療の流れは以下のとおりです。
- 初回カウンセリング: 医師による診察、X線・MRI検査、PRP療法の適応判断
- 採血: 約20〜50mlの血液を採取(通常の血液検査より少し多い量)
- PRP作成: 遠心分離機で15〜30分かけて血小板を濃縮(PRP-FDの場合は3〜4週間の加工期間あり)
- 注射: 膝関節内にPRPを注射(所要時間5〜10分)
- 経過観察: 注射当日は安静、翌日から通常の日常生活可能
注射後の注意点として、当日は入浴(シャワーは可)や飲酒を避け、注射部位の安静を保ちます。2〜3日は膝の腫れや痛みが出ることがありますが、通常は自然に軽快します。効果が実感できるまでには2〜8週間かかります。
適応と限界|PRP療法が向いている人
PRP療法は万能ではなく、適応をしっかり見極めることが大切です。関節ライフによると、以下のような方に向いています。
PRP療法が効果的な方:
- 変形性膝関節症の初期〜中期(KLグレード1〜3)の方
- ヒアルロン酸注射の効果が不十分になった方
- 手術を避けたい、または延期したい方
- 早期のスポーツ復帰を目指すアスリート
PRP療法が適さない方:
- 末期の変形性膝関節症(KLグレード4)で軟骨がほぼ消失している方
- 重度の血液疾患がある方
- 感染症がある方
- 抗凝固薬を使用中で中止できない方
PRP療法で効果が得られない場合は、幹細胞治療や人工関節置換術といった次のステップを検討することになります。また、ヒアルロン酸注射との併用により相乗効果が期待できるケースもあります。

まとめ
PRP療法は自己血液を利用した安全性の高い再生医療で、変形性膝関節症の初期〜中期において有効な治療選択肢です。約60〜70%の患者で痛みの改善効果が報告されており、効果の持続期間はヒアルロン酸注射の2〜3倍とされています。ただし保険適用外のため費用は高額になる点、効果に個人差がある点を理解したうえで、信頼できる医療機関で治療を受けることが重要です。
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